水族館劇場副司令官・桃山邑、これにて退散仕る①


2022野戰攻城「出雲阿國航海記」建込み 新へっぽこ三銃士 左から 臼井のびい・リッチー秋浜・七ッ森サハラ

フェイスブックでお約束した、雲隠れ前の桃山インタビューです。
すでに言葉のはしはしに、生の有限性への覚悟がみてとれます。
同時に読む人を楽しませたいというサービス精神も滲み出ている内容です。
まだ台本は完成しておりませんが、なんとか開幕へこぎ着けようと、参画者全員が朝から汗水を流しています。どうぞお楽しみに。


桃山特別インタビュー  聞き手 秋浜立

――リタイア宣言びっくりしました。観客動員のあらたな手口かと感心したくらい。

これで客がわんさか来て、来年も俺が野戰攻城仕切ってたらおまえの生業である詐欺師と同じだね。

――今回で身をひく理由は?

内緒。

――このさい何でも聞いてやろうと思ってきたのですが。

おまえは小田実か?まぁいいよ。喋るよ。閉店セールみたいなもんだし。

――いつごろ引き際を決めたんですか。

まったく考えてなかった。建込み初日にいきなり発作がきて救急車で運ばれたんだもの。こんなことやってたら、あんまり長生きできないだろうって覚悟はしてたけどね。5~6回身体にメスをいれてるからね。西洋医学的治療はこわれたパーツをとりかえるようなものだから、身体に負担かかってたんだろ。

――病名は?

内緒。俺にも護らなきゃならないひとがいるんでね。

――いまの仕事や生活は無理と診断されたんですね。店じまいを決めたときの気分は?

おまえもしつこいね。三軒茶屋のチヨダ靴店みたいに半永久的な閉店セールもあるんだぜ。

――あそこ、三年以上だらだらセールつづけてましたね。やっぱり引退は客集めのためのガセですか?

そこまで恥知らずじゃないよ。医者からこの状態を続けるのは無理と判断されたんだ。俺は結構冷静にうけとめた。おろおろしなかった。くだらないテレビドラマ観ても滂沱の涙が溢れるのに、宣告には一滴も流れなかった。

――最初に思い浮かべたことは?

限られた時間の中で何ができるか頭が勝手に考え始めていた。

――ほんとですか。

赤紙は予想してたよりちょっと早かったけどね。

――芝居に未練は?

地上とは思い出ならずや。足穂だっけ?

――先に旅だった制作の中原蒼二さんも同じこといってました。

げっ!一緒にされたくない。いまの心境、撤回するよ。

――ではあらためて。道なかばでリタイアする無念は?

あんまりないかな。

――俄に信じ難いですが。

人間て変な計算するんだよ。これで眼の手術しなくて済んだとか、入れ歯にしなくて助かったとか。痴呆症になって徘徊したり、周りを巻き込まず安心したとか。

――貧乏人の悲しい性ですね。

深刻そうな医者の顔見ながら、いくら使わなくて済んだとか金の計算してるの。バカだねぇ。

――せめて芝居師として痕跡をのこしたいとか思わなかった?

それもない。朝3時に起きてお弁当つくって日雇い労働にいく毎日だったから。それからの解放感が大きかった。

――経済的には追いつめられるばかりですね。

助けてくれるひともいるんだよ。まわりに迷惑かける前に消えるのが一番さ。

――ありがとうございました。次回はこれまで語られなかったエピソードなどお話しいただければ。

え?これ連載なの?

――ネタがないんです。

いいけど、台本の邪魔だけはするなよ。まだ書き終わってないんだから。