次回公演

新漂流都市

桃山邑に捧ぐ

作・演出 翠羅臼 音楽 不破大輔

◉序章 水で書かれた手紙一章 海とオルガン 二章 何が彼女をそうさせたか三章 流砂に沈む魂終章 時の箱舟


1990年、翠羅臼が水族館劇場に向けて書き下ろした「漂流都市」が新装版となって33年の時を経て甦る。忘却と捏造に抗うサスペンススペクタクル巨編!乞うご期待!

翠羅臼 「新漂流都市」についての覚書


見遥かす地平の夢幻を追い求め
炎舞う修羅の門をかいくぐり
燃え尽きた地図をかざして
廃墟の路地を流離う堕天使たちよ
冬空に煌めく天狼の星を仰ぎ
焼け焦げた翼のバラードを歌え
失われた魂のレクイエムを歌え

降りそそぐ光の雨の雫をいとおしみ
濡れそぼる襤褸の旗を身にまとい
黄昏の灯かかげ
瓦礫の路地を彷徨う堕天使たちよ
天と地とを覆う凍る夜のとばりを破り
壊れゆく星のエレジーを歌え
まつろわぬ風狂のブルースを歌え


公演日程

2023年
5月17(水)18(木)19(金)20(土)21(日)
26(金)27(土)28(日)29(月)
6月2(金)3(土)4(日)5(月)6(火)

全公演 夜6時半開演

会場

臨済宗建長寺派 宗禅寺 第二駐車場 特設野外儛臺

〒205-0021 東京都羽村市川崎2丁目4-33 宗禅寺第二駐車場(JR羽村駅西口 徒歩12分) google map
宗禅寺 http://www.hamura-souzenji.com

木戸銭 4000 円 当日券のみ 全席自由

入場整理券は午後4 時半から配付
前売券なし、期日指定なし。混雑状況などの情報はHP・SNS にて随時告知。その日観よう。思い立ったが吉日、芝居見物は本来そうあるべき。チケット価格も昨年、値下げを実施した「愛しのコロナちゃん特別価格」のまま、4000円です。ちょっぴり遠い羽村までの交通費に役立ててください。
なお、感染状況が拡大した場合には、観劇の際に感染症対策にご協力いただく場合がありますので、よろしくお願いします。
精確な情報は水族館劇場WEB サイト・SNS にて随時告知いたします。


特別イベント

5月21日(日)
クラウンパレード in 羽村
午後1時開演 入場料2000円 特設野外儛臺

クラウンパレードHP

5月22日(月)

映像制作集団空族 映画上映会『典座-TENZO-』(本編59分)
午後7時開演 入場料投げ銭 上映後相澤虎之助トークイベントあり 特設野外儛臺

「典座-TENZO-」
http://www.sousei.gr.jp/tenzo/

5月27日(土)
渋さ知らズライブ
午後3時開演 料金3000円 宗禅寺本堂

5月28日(日)
シンポジウム『「寺山修司 母の歌、斧の歌そして父の歌」(人間社・刊)をめぐって(伊藤裕作編著)』
午後3時開演 入場料1800円(上記新刊本プレゼントします)
主催伊藤裕作 宗禅寺客殿

芝居上演日 午後4時開店特設野外天幕にて
古書漂着市 古本遊戯流浪堂&古書ほうろう
桃山邑の世界「水の星座」
「曲馬舘の千代次ー虚実の狭間でー」写真黒田康夫

坐禅会 芝居上演日の午後5時より宗禅寺本堂にて

野戰音楽室 出張ジャズ喫茶ちぐさ

桃山邑 最後の著作『河原者のけもの道』(羽鳥書店刊)

テントにて先行発売!桃山邑ロングインタビュー、絶筆含めたエッセイ、昨年の本公演『Naufrágio 出雲阿國航海記』台本を収録。
桃山邑 最後の歌詞歌曲集CDも発売!

お問い合わせ

080-2117-6154
info@suizokukangekijou

出演

千代次 

秋浜立
臼井星絢
七ツ森左門

増田千珠
松林彩
石井理加
藤井七星

楠瀬咲琴
高野りぼん
伊藤あすか

二見彰
伊藤裕作
高野幸雄
伊丹宗丞

津田三朗

風兄宇内

MAIN CREW

秋浜立   劇場設計 舞台 車輌
淺野雅英  美術 
石井理加  制作 WEB  
伊藤裕作  制作
居原田遥  映像
臼井信一  劇場 舞台 車輌  
梅山いつき 制作 木戸
楠瀬咲琴  照明 舞台
小林直樹  記録
近藤ちはる 宣伝美術
杉江ゆかり 木戸
高野幸雄  音響 美術 小道具
玉井夕海  音楽  
千葉大二郎 美術  
千代次   衣裳 制作 
津田三朗  美術 特殊造形
哲     照明 劇場 車輌 
原口勇希  劇場 舞台
東野康弘  音楽
藤井七星  化粧
松林彩   劇場 照明 音響
山本紗由  音楽
渡邊紀子  衣裳 制作

SIDE CREW

天田達也
荒木剛
大山佐智子
川上敦子
姜昡武
金勲
近藤道彦
菅生衣里子 
鈴木亜美
鈴木光
鈴木遊
孫賢守
高田マル
高野多恵子
津田孝平
津田正子
中村聡泰
沼沢善一郎
日高良祐
藤中悦子
二見祥子
MINAMI
毛利嘉孝
森田康史
森田郁子
吉元風子
吉元陽花
高品質珈琲と名曲 私の隠れ家
古書 往来座
古書サンカクヤマ
古書ソオダ水
古書ほうろう
ジャズ喫茶ちぐさ
太子堂八幡神社
橋倉ビーンズ珈琲店
羽鳥書店
古本遊戯流浪堂
福田音響
ホライズン
La Strada(石巻)

SPECIAL THANKS  臨済宗建長寺派宗禅寺 (株)松尾工務店


「新漂流都市」についての覚書

翠羅臼

 1990年秋、水族館劇場公演「漂流都市」のパンフレットに、私は次のように記しています。

 「無人の廃墟になってから17年、立ち入り禁止の島として汐風と東シナ海の荒波にさらされていたその「緑なき島」にランチをチャーターして接近すると、それは軍艦というよりも映画「パピヨン」に出てくるような監獄島の要塞のように見えた。(略)一つの棟の四畳半の襖には幼い字で「金魚と小鳥よろしくお願いします」と書かれてあった。そのようにして、生徒たちが島から一人ひとり歯が抜けるように転校していったに違いない端島小中学校の音楽教室。何故か鉄格子のある教室の窓から見下ろすと、ほんの10メートルほどの距離に潮騒が迫り、窓辺には朽ち果てたオルガンが一台ポツンと残されていた。廊下に出ると、星座の名を書きつらねた押しボタンがあり、天井には豆電球を配したプラネタリウムが断線したまま、ひっそりと放置されていた。(略)その島はかつて石炭を掘るだけに建設された人工の島で、大正7年(1918年)竣工の10階ほどの鉄筋コンクリート・アパートは日本最初の高層アパートだったといわれている。海上から見るとそのアパート群の輪郭が海に浮かぶ軍艦のように見えることからその名前がついた。周囲わずか2キロの山側には神社と豪奢な幹部住宅が立ち並び、東シナ海の荒波を被る海側の労務者たちが起居する高層住宅の周辺は<汐降り街>と呼ばれていた。林えいだい氏の「清算されない昭和―朝鮮人強制連行の記録」によれば、その建物は旧下請け飯場であり、共同炊事場と共同便所がある各階の、隣の部屋と目と鼻の先に迫る6畳間の窓には当時は鉄格子が張られていた。かつて強制連行された1000名を超える朝鮮人、中国人<労務者>が6畳間に7、8人も押し込められていたという。住宅側と島を二分する鉱場のピロティ状の鉄柱の先には坑道に続く巨大な門が口を開け、朝鮮人、中国人<労務者>たちは、一度その門をくぐったら死ぬまで出られない地獄門(チオンムン)とそれを呼んでいたという。」

 2015年、安倍晋三、菅義偉らは、軍艦島の<世界文化遺産>としての登録を画策し、強制徴用された朝鮮人、中国人労働者に関する日本政府の説明がないとして「強い遺憾」を盛り込んだユネスコの世界遺産委員会による決議の採択を無視するどころか、産業遺産情報センターでの展示では差別、虐待、強制労働は全くなかったという元島民の虚偽証言の映像を公開し、強制連行そのものすらなかったとする歴史修正主義者の正体を性懲りもなく露わにしました。

 桃山邑から託された今春の水族館劇場公演の演目として、あえて「漂流都市」を改訂した「新漂流都市」をやりたいと思った理由の一つは、このような歴史の隠ぺいと捏造がまかり通っている状況に対する強い危機感と憤激であり、もう一つは、これが33年前に水族館劇場に書かせてもらった初めての芝居であることへの深い愛着でした。

 物語は、1974 年、端島炭鉱が廃坑となり、転校していく同級生たちをお別れのオルガンで独り見送り、誰かがハメルンの笛吹き男のように迎えにきてくれることを夢みた、海の見える音楽教室でのはるか(アネモネ)の記憶から始まります。軍艦島の娼館で産まれ育ったはるかは、港町から港町へと流離うピアノ弾きとなり、釜山、チェンマイ、バンコクからやってきた3人の少女たちを誘って、じゃこまんと名乗る塵芥運搬舟の船頭の舟に勝手に乗り込み、佃島界隈の水上生活者の街、通称「天使村」に彷徨いこみます。世界は傾き、鼠が異常発生し、海の魚は死んで打ち上げられ、死に至る疫病が蔓延するデストピアの様相を呈する時代を背景に、鼠駆除の亜細亜衛生社、チンドン屋の亜細亜芸能社などを手広く経営し、ハメルンの笛吹き男を思わせる、まだらの男と呼ばれる天使村のドンと、配下の夢の島久作とフレディ宅、まだらの男の飼い殺し状態で溶接工場を営む義足の青年・柊と、同居する事務員すもも、地下水道を隔てて工場の向かいにある古道具屋の流浪堂、その二階に間借りする孤児であるしっかり者のミドリと夢見る少年アキラの姉弟、北風の弦にのって天使村を訪れ、木枯らしの街を流離うはるかをそっと見守るセロ弾きのゴーシュ、鼠退治に躍起になっている天使村の住民の天敵、猫捕り男、かつて朝鮮から強制連行された軍艦島の端島炭鉱の女鉱夫で、阿呆陀羅経と唱える砂絵の大道芸人に身をやつした、はるかの出生の秘密を知るスジャおばさんらの登場人物が、戦中から未来まで時空を超えてワープする夢幻の物語を織りなします。はるかの分身である童女のささやきに誘われて、はるかは柊を義足の旅に誘い込み、敗戦直前に炭鉱で起こった落盤、出水事故とその顛末、はるかの出生の秘密と、まだらの男の正体が暴かれる、サスペンススペクタクル巨編です。