水族館劇場

水族館劇場

昭和の終わりに創設された野外劇の役者徒党。中世河原者の系譜にみずからを位置づけ、1987年より芝居の坐を全国に建立開始。野戰攻城と名付ける野外公演は建築資材を援用し、サーカス天幕のような巨大な仮設小屋を役者自身で建込む。劇場構造も公演の都度あたらしく考案される。三基の回転舞台と廻り舞台ごとスライドする機構が、奥行6メートル×幅7メートル×深さ1メートルの巨大水槽の上に設えられる。

顔見卋と呼ばれる入場前の劇場外芝居からスペクタクルシーンを全開してゆく。クレーンを使って夜空に役者をのせた飛行船や複葉機をとばし、空中ブランコ、綱渡り、火吹きなどを披露。劇場内で幕が落とされてからも、観覧車や回転木馬が登場、花道をつらぬいて走るトロッコや吊り落とされる鉱山列車など、ルナパーク的なメラヴィリアがつぎからつぎへ展開される。白眉はラストに2~3トンの水が天空から落ちてくる屋台崩し。このシーンは再演をしない野戰攻城のなかで定番になっている。座付作家である桃山邑が書下す台本は藝能と神話を往還しながらアクチュアリティーにみちた暗喩的世界観を見る者にさしだす。いわゆる小劇場的な演劇観とまったく無縁な場所から出立し、他のどこにもない芝居空間を創出する。あらゆる演劇潮流とは別の活動をつづけていた役者徒党を最初に世に認知させたのは早稲田演劇博物館の学芸員だった梅山いつき。当時無名だった水族館劇場を博物館内に展示する断をくだし、呼応した学魔・高山宏を複葉機に載せて観客の頭上に飛ばすという演出を桃山が考えた。この頃より支援者の裾野がひろがり始める。2017ヨコハマトリエンナーレでは当時の横浜美術館長・逢坂恵理子の要請にこたえ、日雇労働者の街、寿町で会田誠・岡本光博をはじめ美術家と空族・布川徹郎の映画上映、田中純、田中優子、野本三吉らの講演を芝居公演とからませた一大ページェント「盜賊たちのるなぱあく」を展開。行政サイドとぶつかりながら最終的に絶賛される。

2019花園神社「搖れる大地」では頭脳警察・PANTAが音楽を担当。結成50周年をむかえるバンドのコンサートを特別野外舞台で開催した。その年の夏には、翠羅臼・渋さ知らズと混成旅団を組み、沖繩・辺野古基地ゲート前でさすらい姉妹路上芝居を敢行。野戰攻城と呼ばれる野外劇上演のたびに全国よりいろんな技能を持つ芝居者が駆けつけて数十人のメンバーで野戰攻城を展開している。


メンバー

千代次
ただひとり残った創設メンバー。さすらい姉妹座長。

秋浜立
野戰攻城棟梁。2014「un-ga-yokerya」でデビュー。

風兄宇内
廃墟跡の芝居、1995「東京軍艦島」より合流。

臼井星絢
全国縦断旅興行「星澄ム郷へ」照明から役者転身。

七ッ森左門
棟梁補佐。2008「永遠の夜の彼方に」から参画。

松林彩
音響から2016「憂鬱なサザエさん」で役者道へ。

石井理加
ホームページ製作。「運がよけりゃ」が初舞台。

藤井七星
劇団最年少。2021「のざらし姫」でデビュー。

山本紗由
音楽担当。2016「この丗のような夢」より正式入団。

増田千珠
2006「地上を旅する者」より合流。現在リハビリ中。

淺野雅英
美術監督&演出。役者徒党にあって唯一の専従スタッフ。

桃山邑
水族館劇場元副司令官。顕世と幽世を自在に往来する。

サポートメンバー

津田三朗  博多在住。旗揚げ「筑豊暗黒星巡り」制作。桃山の盟友。
津田正子  2012「夜と骰子とドグラマグラ」で制作・広報・役者をこなす。
鈴木都   音楽担当。美濃在住の陶芸作家。少年時代は役者在籍。
近藤ちはる 2005「月と篝り火と獣たち」で宣伝美術初担当、衝撃のデビュー。
伊藤裕作  制作。羽村・宗禅寺への導師。壊滅的台詞記憶術の担い手。
毛利嘉孝  さすらい姉妹演出担当。社会学的視座から水族館劇場を領導。
梅山いつき 野戰攻城制作。2009「やぶれ船で流浪する水夫たち」企画。
居原田遥  芝居と美術関係の連携役。西表カナタとして役者もこなす。
千葉大二郎 岡本太郎特別賞受賞。2021「アントロポセンの空舟」で役者道へ。
二見彰   古本遊戯・流浪堂店主。たびたび水族館劇場企画展示を開催。
伊丹宗丞  照明担当。安曇野在住。2020「乾船渠八號」より合流。
高野幸雄  青梅在住。きのこランプ造形作家。小道具。「モスラ」で初舞台。
赫十牙   1989「水の罠」以来、断続的に出演する変態役者。
南海里   元タカラジェンヌ。鎌倉の居酒屋テンスケの女将。
日高良祐  音響ハード面の要。2018「望郷オルフェ」で初舞台。
羽鳥和芳  2013「水族館劇場のほうへ」出版。人文学者と桃山のつなぎ役。
矢吹有鼓  2014「谷間の百合」全国ツアー参画。桃山が信頼をよせる編集者。
宮地健太郎 古書ほうろう店主。駒込大観音時代からの古本ネットワークの要。
宮地美華子 さすらい姉妹はじめ、古書ほうろう店内で関連イベントを開催。
近藤道彦  宣伝美術担当。水族館劇場復活の狼煙となった「黒船前後」制作。
鈴木亜美  静岡在住。近藤道彦とともに制作を担う。公演の度に全面的援助。
東野康弘  音楽担当。おもにさすらい姉妹テーマ曲作曲。みずからも歌う。
癸生川栄  eitoeiko オーナー。2019「搖れる大地」で本格デビュー。
癸生川鳩  2019「搖れる大地」で満洲うまれの少年を演じて初舞台。
DJ.YOU   映像、記録、音響スタッフ。劇団旗揚げ期より裏方として支える。
小林直樹  記録、映像スタッフ。2019「海を越える蝶」では漁師も演じた。
楠瀬咲琴  照明オペレーター。舞台美術セットもたたく万能スタッフ。
二見祥子  二見彰とともに流浪する古書店「古本遊戯」を宗禅寺で開催。
沼沢善一郎 音響オペレーター。建築業界紙記者という縁で桃山と出会う。
中村聡泰  木戸担当。マッチョな身体と抜群のアイデアで制作補佐も。
杉江ゆかり 木戸担当。トラブル対処、観客さばきには定評。
藤中悦子  木戸担当。全面中止となった 2020 野戰攻城で幻の初舞台。
菅生衣里子 木戸担当。石井理加の盟友。同じく 2020 野戰攻城で幻の初舞台。

翠羅臼   伊東在住。劇作家。2023 野戰攻城新作の作・演出。

後見

羽村・臨済宗建長寺派 医王山・宗禅寺
三軒茶屋 太子堂・八幡神社
㈱ 松尾工務店